牡蠣の基礎知識|あたるの?洗い方は?養殖方法と歴史【2019年版】
牡蠣養殖の過程
目次
- 1 牡蠣とは
- 2 飲み屋で使える牡蠣豆知識①
- 3 飲み屋で使える牡蠣豆知識②
- 4 【超重要】牡蠣には「生食用」と「加熱用」があります
- 5 殻付き牡蠣の開け方(開けた後、洗う必要ありません)
- 6 牡蠣の生態について
- 7 牡蠣の種類・分類
- 8 卵生型
- 9 卵胎生型
- 10 真牡蠣の特徴
- 11 種牡蠣とは
- 12 宮城県石巻市| 万石浦の種牡蠣
- 13 日本の牡蠣(マガキ)がフランス・ヨーロッパの牡蠣の全滅・絶滅危機を救った
- 14 牡蠣養殖の歴史(日本)
- 15 牡蠣養殖の過程(ホタテ貝を使った筏式垂下法)
- 16 天然採苗とは
- 17 人口採苗とは
- 18 シングルシード方式
- 19 従来型の牡蠣養殖方法における課題
- 20 ★未来型牡蠣養殖ソリューション
- 21 牡蠣を通じて持続可能な漁業についても考えたい
牡蠣とは
牡蠣はウグイスガイ目イタボガキ科とベッコウガキ科に属する二枚貝の総称、あるいはカキ目もしくはカキ上科に属する種の総称です。
名前の由来は海の岩から「かきおとす」ことから「牡蠣」という名前がついたと言われています。
古くから世界各地の沿岸地域で食用、薬品や化粧品、建材として利用されています。
飲み屋で使える牡蠣豆知識①
飲み屋に行って牡蠣を注文した時にこの豆知識を披露してみてくださいね笑
Q.牡蠣は何を食べているの?
A.植物プランクトンを食べてます。
牡蠣の餌は植物プランクトンです。食事は昼も夜も休みなく1日中行っています。
牡蠣はエラを使って餌を取り込んでいます。エラは大量の海水を吸い込み、この中に浮かんでいるプランクトンを取り込みます。
飲み屋で使える牡蠣豆知識②
これまた使える牡蠣豆知識!牡蠣と海の関係です。
Q.牡蠣は1日にどのくらいの海水を飲み込むの?
A.牡蠣1個につき、1日400リットル以上!
500mlペットボトルで換算すると800本分!つまり「牡蠣=海」なんです。牡蠣のためにも、私たちのためにも、海はキレイにしましょうね。
【超重要】牡蠣には「生食用」と「加熱用」があります
スーパーマーケットの鮮魚売り場に並んでいる牡蠣、居酒屋さんやレストランなどの飲食店で提供される牡蠣、いろいろな種類がありますが、牡蠣に「生食用」と「加熱用」があるのを知ってますか?
生食用の牡蠣
清浄な海域で漁獲されたものや、一定時間(24時間など)清浄な海水に入れて、牡蠣の体内に含まれる雑菌などを糞とともに排出させる「浄化」という工程を経たものを指します。
そのため、牡蠣の身や殻表面の雑菌などの数が格段に少なく、その安全性は高いです。
加熱用の牡蠣
加熱させることで体内に含まれる雑菌などを死滅させ安全性を高めます。「浄化」の工程を行わないことが多く、雑菌などが牡蠣の身に存在することがあり、よく加熱が必要となります。
時々、加熱用の方が味が濃いという声もありますが、これは「浄化」の工程を行っていない牡蠣に排泄物などが残り、それらの雑物の味を強く感じる場合が多いためです。
殻付き牡蠣の開け方(開けた後、洗う必要ありません)
殻付きの生牡蠣を開けるのって難しいの?いえいえ、そんなことはありませんよ。
確かに何も知らずに「はい!開けて!」なんて言われたら躊躇しちゃうかもしれませんが、ポイントをちゃんと押さえれば誰にでも簡単なんです。
しかもキレイに、さらには牡蠣の心臓が動いたままの新鮮さを保って開けることができるんです。それでは牡蠣開け教室のはじまりです!!
牡蠣の洗い方をよく聞かれますが
そして、とても重要なこと。
それは「牡蠣は洗わない」ということ。牡蠣殻に入った現地の海の海水を纏わせたまま食べるのが一番美味しいのです。
牡蠣の生態について
ここからは牡蠣の生態についてまとめていきます。
牡蠣の構造
牡蠣はアサリやハマグリと同じように二枚貝です。
アサリやハマグリの貝はすべて同じような形をしているのですが、牡蠣は周囲の環境によって細長くなったり丸くなったりと殻の形が変わるのが特徴です。
また、アサリやハマグリは二枚の貝殻が、2つの貝柱と靭帯でくっついているのですが、牡蠣の貝柱は1つだけです。
牡蠣の殻には身殻とフタ殻があります。
これら2枚の殻は、形と大きさが違っています。深くくぼんで膨らんでいるほうは身殻で、平らでフタをするようになっているのがフタ殻です。
殻を開けてみると、まず貝柱と外套膜(がいとうまく)を確認することができます。この外套膜を取り除くと、エラ・食道・心臓・口・胃・肛門なども確認できます。
牡蠣のエサ
牡蠣のエサは「植物プランクトン」です。食事は昼も夜も一日中、ほとんど休まず行っています。
エサを摂るのはエラの役目です。エラが海水を吸い込みながらプランクトンを食べています。
牡蠣1個が吸い込む海水の量は1日400リットルとも言われています。
牡蠣は交尾をするの?
牡蠣は交尾をしません。
マガキの場合(牡蠣には種類がたくさんあります)はメスが卵子、オスが精子を海中に放出し、海水中で受精が行われます。
それらが合わさって牡蠣の赤ちゃんとなります。体外受精です。
うまく受精すると卵は次々と分かれていきます。身を包む貝殻は受精後の約1日で作られます。
牡蠣の成長過程
牡蠣は生まれた後、幼生として約2週間の浮遊生活をします。気に入った場所が見つかったら付着し、一生その場所を離れることはないのです。
牡蠣の生態あれこれ
牡蠣の生態についてもうちょっと突っ込んだお話です。
牡蠣は泳ぐの?
生まれてから2〜3週間の幼生期と呼ばれる期間だけは泳ぎます。その後は泳ぎません。
牡蠣に足は付いているってホント?
幼生期だけは足を出して海中を動き回ります。気に入った場所が見つかったら付着し、牡蠣の幼貝になって足はなくなります。
付着する場所を探すため、光を察知できるように目が発達し、付着するために足が発達します。
牡蠣の種類・分類
牡蠣は大きく分けて、卵生(卵を産む)タイプか、卵胎生(親の胎内で卵発生した幼生を産む)タイプに分かれます。
具体的には、日本のマガキのように卵と精子を別々に持っているもの(雌雄異体)と、ヨーロッパヒラガキのようにひとつの体に卵と精子を持つもの(雌雄同体)があります。
卵生型
卵を産むタイプです。
Crassostrea属
名称 | 分布 | 学名 |
ポルトガルガキ | ポルトガル・フランス・スペイン | Crassostrea angulata |
バージニアガキ | アメリカ大西洋岸 | Crassostrea virginica |
マガキ | 日本・韓国・カナダ・アメリカなど | Crassostrea gigas |
ミナミマガキ | 南シナ海・フィリピン・インドネシア | Crassostrea iredalei |
名称不明 | キューバ・ホンジュラス・ベネズエラなど | Crassostrea rhizophorae |
スミノエガキ | 日本(有明海) | Crassostrea ariakensis |
イワガキ | 日本 | Crassostrea nippona |
Saccostrea属
名称 | 分布 | 学名 |
シドニーガキ | オーストラリア・ニュージーランド | Saccostrea commercialis |
名称不明 | ニュージーランド | Saccostrea glomerata |
ケガキ | 日本 | Saccostrea kegaki |
卵胎生型
親の胎内で卵発生した幼生を産むタイプです。
Ostrea属
名称 | 分布 | 学名 |
ヨーロッパヒラガキ | 地中海〜スカンジナビア半島・イギリス | Ostrea edulis |
オリンピアガキ | アメリカ太平洋岸ワシントン州 | Ostrea lurida |
イタボガキ | 調査中 | Ostrea denselamellosa |
名称不明 | オーストラリア・ニュージーランド | Ostrea angasi |
Tiostrea属
名称 | 分布 | 学名 |
名称不明 | チリ・ペルー・エクアドル・ニュージーランド | Tiostrea chilensis |
真牡蠣の特徴
- 世界に分布する牡蠣のうち、55%がマガキ
- どのような環境でも対応できる強い生命力
- 繁殖力も強い
種牡蠣とは
種牡蠣とはひとことで言うと「養殖牡蠣の子ども」のことです。
ロープにホタテの殻を50枚ほど通してくくりつけます。そのホタテがついたロープを牡蠣の産卵時期に海中に垂らします。
すると海中に漂っている牡蠣の幼生がホタテの殻に付着して、そのホタテを棲家のようにして牡蠣が育つのです。これが種牡蠣となります。
その種牡蠣を牡蠣養殖家に出荷し、牡蠣養殖家が出荷用の牡蠣を育てると言う図式です。
宮城県石巻市| 万石浦の種牡蠣
- 出典:環境省ホームページ
実は牡蠣の種が採れる海は世界的にもそう多くはありません。万石浦はその中のひとつです。
万石浦の種牡蠣は、過去にフランスをはじめとする世界に輸出されていました。現在も広島や九州、北海道など日本各地に出荷されています。
水温や豊富なプランクトン、そして何よりも干満の差が質の良い種牡蠣を産出するのです。
日本の牡蠣(マガキ)がフランス・ヨーロッパの牡蠣の全滅・絶滅危機を救った
牡蠣は、生で海産物を食べるという「刺身文化」が世界に普及されるまでの間、欧米においては数少ない、伝統的に生食される海産物でした。
生牡蠣文化はフランス発です。この文化は200年以上も欧米人を虜にしています。
一方、日本における牡蠣の生食文化は大きく遅れをとっています。
しかし、日本はこの古くからの欧米における生牡蠣文化に重要な役割を果たしているのです。
1970年代にフランスの牡蠣養殖産業は、病原性微生物によって壊滅的なダメージを受けました。
このような危機を日本の在来種であるマガキが救いました。これが日本のマガキを世界に広めるキッカケとなったのです。
日本のマガキは病原性微生物への抵抗力が強く、生存率が高く、成長速度も速いです。
それに加えて美味しい!
世界の主要牡蠣生産地においてとてもメジャーな品種となっています。
牡蠣養殖の歴史(日本)
「天文年間(1532〜1555年)安芸国において養殖の法を発明せり」という文献が残っています。
牡蠣の養殖の歴史は古く、今から450年ほど前、いまの広島で始まりました。宮城県では300年ほど前、松島で内海庄左衛門さんという人が始めたとされています。
①石蒔(いしまき)式養殖法
干潟に小石を並べて牡蠣を付着させ、成育を待って収穫する方法です。生産性はあまり高くありませんでしたが、風波の影響を受けにくいことから簡単だったので、ずっと長く続きました。
②地蒔(ちまき)式養殖法
牡蠣を干潟の砂の上に直接置いて、成育を待って収穫する方法です。石蒔式養殖法と同じで収穫までに3〜4年かかるので生産性の悪いものでした。
③ひび建て養殖法
竹や雑木を干潟に建て、牡蠣を付着させて成育を待って収穫する方法です。収穫までそのまま養殖する方法と、途中で牡蠣を落として地蒔式養殖を行い収穫する2つの方法がありました。
この養殖方法は、干潟の水位、潮流の緩急、風波の強弱などの湾内の環境の違いに適応し、それぞれの地域で特色ある技術の発展がありました。
ひびとは、竹や松、雑木を干潟に建てたもののことです。
④杭打垂下法(くいうちすいかほう)
干潟に高さ1.3〜1.4mの棚をつくり、これに貝殻と竹の管を交互に通した連をぶら下げて、牡蠣を付着させ成育を待って収穫する方法です。
この方法は、昭和のはじめごろから30年ごろまで行われていました。
⑤筏式垂下法(いかだしきすいかほう)
干潟の棚ではなく、筏に牡蠣の種がついている貝殻と竹やビニールの管を交互に通した連をぶら下げ、成育を待って収穫する方法です。
昭和7年に広島県水産試験場によってはじめてこの筏式垂下法が行われましたが、このころの筏は杉や檜で組み立てた筏だったので、風や波に弱いという欠点があったためあまり普及しませんでした。
昭和28年、孟宗竹(もうそうちく)で組み立てた筏で試験を行った結果、風や波に強く、しかも制作費が安いことが分かり、竹による筏式垂下法は急速に普及しました。
これによって、漁場の沖合化を可能にし、漁場面積は拡大、それに伴って生産量も飛躍的に伸びました。
⑥延縄垂下式(はえなわすいかしき)
海面に浮かべた樽浮(プラスチックや木など)の両端をロープで連結し、このロープに牡蠣を連ねたものを垂下していきます。
耐久性が優れているので、風浪の強い湾口や外洋で用いられています。
宮城県では生産量の約9割が延縄式です。
牡蠣養殖の過程(ホタテ貝を使った筏式垂下法)
牡蠣ができるまでには、
- 採苗(さいびょう)
- 抑制(よくせい)
- 本垂下(ほんすいか)
- 育成(いくせい)
- 収穫(しゅうかく)
といった順序があります。下記の説明は広島における牡蠣養殖(筏式垂下法)を例にしています。
①採苗
採苗とは、牡蠣の幼生(赤ちゃん)を海中から採取することです。
夏に卵からかえった牡蠣の幼生は約2週間の間、海の中を漂いながら過ごし、その後、海水中の固着物に付着します。
そこでこの時期にホタテ貝の貝殻(カルチ又はコレクターと呼ばれる)を海中に入れておくと、うまい具合に牡蠣幼生(約0.3mm)が付着します。
このように幼生を付着させることを採苗といい、毎年7月中頃から9月中頃まで行います。
②抑制
抑制とはひとことで言うと「稚貝を鍛える工程」です。どのように鍛えるのかと言いますと、潮の満ち引きを利用して、
- 潮が満ちた時には海のプランクトンを食べさせる
- 潮が引いた時には、陽に当てて貝を開け閉めさせる
このようにして稚貝を鍛えています。
採苗した牡蠣の種は、採苗連のまま沿岸の棚(抑制棚)に移します。この棚は、干潟の時より高い位置にあるため、採苗連は海水中に浸かっている時間が少なくなります。
抑制を行う理由は、
- 牡蠣が大きくなりすぎると翌年夏の産卵後に死ぬことが多い
- 環境の変化に強い抵抗力をつけさせる
- 次の工程に行く牡蠣の斃死率(へいしりつ)を減らす
このような理由で抑制を行っています。
③本垂下
牡蠣を海中に入れる工程です。
採苗連からホタテ貝を外して新しい針金(長さ約9m)に一枚ずつ移し替えて垂下連を作ります。これを「通し替え作業」と言います。
1つの垂下連には、約50枚のホタテ貝を使います。できた垂下連は次々と筏に吊るしていって、1つの筏に約600本が吊るされます。
④育成
牡蠣を育てる工程です。本垂下を終えた牡蠣は、収穫の時期まで成長を続けます。
本垂下してから収穫するまでの間、牡蠣が死なないように、有害な生物がつかないように、そして身入りが良くなるように様々な工夫をしてます。
その代表的なものに「深吊育成(ふかづりいくせい)」と「直吊育成(じかづりいくせい)」があります。
深吊育成
牡蠣は高い水温に比較的弱いので、夏の表層の高水温を避けることや、牡蠣にとって有害な生物(ムラサキガイ、フジツボなど)の付着を防止するため、海中深くに吊り下げます。
直吊育成
水面近くは、牡蠣のエサであるプランクトンが多く浮遊しているので「直吊」で育成する方が身入りは大きくなります。
秋になって水温が下がり、牡蠣にとって有害な生物も少なくなってきた頃、牡蠣を大きくするために垂下連を水面近くに吊り下げます。
温湯処理/真水処理
深吊育成ができない深さの漁場では、牡蠣にとって有害な生物(ムラサキガイ、フジツボなど)を避けることができないため、船上に設置した大きな窯にお湯をを沸かし漬けたり、真水の水槽に垂下連ごと漬けて有害生物を死滅させます。
温湯処理の様子はこちらからご覧いただけます。(3分6秒の動画です。)
干圧
生命力の強い牡蠣の生態を生かした育成法で、海の干満を活用し海面上に露出させ、日光や空気中にさらすことで生命力の弱い有害生物だけを死滅させる方法です。
また、牡蠣の貝柱を鍛えることができるメリットもあります。主に干潟で育てられるブランド牡蠣に用いられる方法です。
移動養殖
直吊、深吊の考え方に加えて、プランクトンの質や海水温度、波の大小などを見極めて、その牡蠣にとって最適な育成条件にあった海域に移動させて育成する方法です。
バスケット養殖(ホタテ貝を使わない方法)
主に干潟養殖に用いられる方法で、杭の間に張られたロープにバスケットを水平に固定し、バスケット自体を波や干満を活用して揺らし、バスケットの中で牡蠣が転がりぶつかり合うことで、自然と殻がキレイに仕上がります。(川上のゴツゴツした石が川下に流れてくると丸っこくなるように。)
殻付き生牡蠣をよく食べる欧米やオーストラリアなどでは、殻の形のキレイさも重要視されるためにこの養殖方法が多く採用されています。
⑤収穫
10月から11月になると収穫が始まります。垂下連は9mにも及び、牡蠣も大きく成育しているため、とても重くて人間の手では引き上げられません。
なので、船に約10mの長い柱を立てて、ウィンチを用いて巻き上げて収穫します。
収穫された牡蠣は、殻のまま洗浄器で洗い、泥や付着生物(ムラサキガイ、ホヤなど)を取り除きます。
さらに1日きれいな海水プール(蓄養プール)に置いて牡蠣をキレイにします。
翌日牡蠣は、1個ずつ貝柱を切って殼を開け、中の身を取り出します。剥き身は滅菌海水や清浄海水で良く洗い出荷されます。(広島は剥き身牡蠣の出荷が多い)
天然採苗とは
天然で発生する牡蠣の稚貝を養殖用として採取することを言います。対義語は「人口採苗」です。人口採苗とは、栽培漁業センターなどの種苗生産施設で行われている採苗方法です。
牡蠣の幼生(カエルで言うとオタマジャクシの時期)は、海の中を漂いながら付着するところを探すという特性があるので、ホタテ貝などに付着させて確保します。
しかし天然採苗は、幼生の発生時期や集積が自然環境に大きく左右されるため不確定な要素がとても多いです。
そこで、各県の水産試験場や漁業協同組合、青年研究会などが、牡蠣の浮遊幼生の発生状況や分布を定期的に調査していて、採苗業者に情報提供を行っています。
天然カルチ採苗
ホタテ貝の貝殻(カルチ又はコレクターと呼ばれる)を海中に沈めて、天然受精して海中で浮遊している牡蠣の幼生を付着させる種苗生産方法です。
人口採苗とは
人口採苗とは、前述したように栽培漁業センターなどの種苗生産センターなどの種苗生産施設で行われている採苗方法です。
人口カルチ採苗
人工授精させた牡蠣の幼生を室内でホタテ貝の貝殻(カルチ又はコレクターと呼ばれる)に強制的に付着させる採苗方法です。
そもそも人工授精はどのようにしているのかについては、この下部の記事をご覧ください。
人工授精から孵化まで
牡蠣はその外観からオスなのかメスなのかの判別がつきません。そのため、殻を開いて軟体部分に切れ目を入れ、中身を確認します。
顕微鏡で卵子、精子を確認してオスとメスを別に収容し、人工授精を行います。
その後、水温25〜28℃で14〜16日の間、幼生の飼育を行います。幼生の大きさは受精直後で0.05〜0.06mmで、稚貝に変態したときには0.3〜0.35mmとなります。
受精後、一定の期間は浮遊幼生として水中を漂いながら、気に入ったところが見つかるとそこに付着して稚貝となるのです。
シングルシード方式
前述した「カルチ採苗」は一枚のホタテ貝の貝殻にたくさんの数の牡蠣の幼生が付着します。
これに対して「シングルシード方式」は、約0.2mmに粉砕した牡蠣殻に幼生を付着させます。ホタテ貝の貝殻などの付着基盤を使わずに、最初から一粒で成長させる採苗方式です。
シングルシード方式のメリット
- 安定した種苗生産が可能
- 正確な生産数の把握ができる
- 収穫時にホタテ貝の貝殻から牡蠣を外すといった剥離作業がないので効率がよく生産性が高い
従来型の牡蠣養殖方法における課題
これまでの牡蠣養殖方法の課題をまとめてみました。
天然カルチ採苗
- 付着数が年によって変化が激しく安定しない
- 牡蠣への付着物や牡蠣の脱落による環境負荷
- 養殖量の制御が難しい
人口カルチ採苗
- 室内でできる範囲内での生産量となるので、生産コストがとても高い
- 室内でできる範囲内でのタンクサイズだとホタテ貝への付着が安定しない(本来は深さが必要)
- 室内育成タンクの底にも付着してしまうので除去作業が大変
従来型シングルシード方式
- 種苗サイズが小さいので管理に手間がかかる
- 生存率を計算に入れると、種苗価格がとても高い
- 原価の高さから高価なブランド牡蠣として出荷する必要があるので市場が限られてしまう
★未来型牡蠣養殖ソリューション
このような従来型の牡蠣養殖の課題や問題点を解決する新しい牡蠣養殖技術もすでに開発されていて、実用化されています。
いままでの牡蠣養殖と違うところ
- 最新技術によって陸上で小型稚貝を大量生産・安定供給ができる
- 中間育成装置で短期間に効率的に大型種苗を育成できる
- 防汚カゴを使って養殖するので、牡蠣の生育を阻害し、海域の水質を悪化する付着物(フジツボなど)が付かないようにする
陸上で稚貝を大量生産&安定供給
天然採苗は、幼生の発生時期や集積が自然環境に大きく左右されるため不確定な要素が多いです。ですがこの未来型牡蠣養殖では、陸上で稚貝を大量生産し、安定供給できます。
中間育成装置|フラプシー
生後1ヶ月の牡蠣はまだまだ小さく2mmくらいの大きさです。ですからこのまま沖に出すと、わざわざ目合いの小さなカゴを用意したり、牡蠣ごとに成長のバラつきが出るので管理がとても大変です。
ですから、最新の中間育成装置のフラプシーで効率よく牡蠣に海中の酸素やエサを供給することによって成長を促します。ちょうど保育器のような役割です。
養殖期間を通してカゴで養殖
これまでの牡蠣養殖は付着物がつく前提で行われていました。未来型牡蠣養殖は「付着物を極力つかせない」ように行われています。
そうすることにより、養殖海域底質の汚れの原因となる「落ち牡蠣」が少なくなりますし、漁場もクリーンな状態を保てます。また、牡蠣も当然美しく仕上がります。
これからの牡蠣養殖の在り方は、牡蠣の美味しさの追求も大事にしながら「環境への配慮」や養殖方法の「持続可能性」についても問われています。
牡蠣を通じて持続可能な漁業についても考えたい
日本列島は四方を海に囲まれています。ここまで水産物に恵まれた国はそうないと思います。ですから日本は世界に誇る水産国だと思う方も多いのではないでしょうか。
しかし、私たちを取り巻く状況はあまり良くないようです。日本近海ではいま、水産物がどんどん減っています。
魚や貝などの水産物は、根こそぎ獲り尽くしたりしなければいつまでもその恵みを受けることができます。しかし今、乱獲や海の環境を壊しかねない漁法によって水産資源の枯渇化が問題になっています。
しかし、世界の海に目を向けてみると、豊かな水産資源を保ちながら毎年大きな漁獲高をあげ、水産業は発展している国がたくさんあるようです。
私たち牡蠣の会では、牡蠣を通じて「持続可能な漁業」を大きなテーマに掲げて、考え行動していきたいと思っています。

あずまよしのぶ

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