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2017-07-21

戸倉っ子かき(宮城県南三陸町)ASC国際認証を日本初で取得!

海のエコラベル「ASC」って知っていますか?

ASCのお話をする前に、海のエコラベルとして知られている「MSC」という認証があることをお話する必要があると思います。

MSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)では、海の自然や資源を守って、これからもずっと続けられる持続可能な漁法で獲られた水産物を認証して、エコラベルを付ける取り組みを行なっています。

つまり、MSCは天然の水産物に関するエコラベルです。

これに関連して、養殖による水産物にも同じように認証をする仕組みがあります。これが養殖版エコラベルの「ASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖協議会)」の認証制度です。

なぜASC認証をしてエコラベルを付ける必要があるの?

人間が日常生活で消費しているさまざまな種類の水産物は、大きく分けると「天然物」と「養殖物」に分かれますよね。

この養殖物の水産物はとても成長が著しいので、世界の水産物のおよそ半分を占めるほどに増加しています。しかし、この養殖水産業にはさまざまな問題点があります。

養殖水産業の問題点

  • 養殖場建設による自然環境の破壊
  • 水質や海洋環境の汚染
  • 薬物の過剰投与
  • 餌となる生物の過剰供給
  • 養殖された魚が病害虫を自然界に持ち込む
  • 養殖場から逃げ出した個体が外来生物として生態系に影響を及ぼす

このように養殖水産業には、海の環境の悪化や餌となる天然魚の過剰供給、逃げ出した養殖魚による生態系への悪影響など、さまざまな問題があります。

2050年食料問題

世界人口が増え続ける中で、2050年の世界人口は90億人に達するとの予想がされています。水産物は貴重なタンパク源であり、食料供給を安定的に行うためにも養殖水産は引き続き拡大が見込まれます。

しかし、さまざまな問題を抱える養殖水産をいかに将来にわたって持続可能な形で行われていくのかが課題となっています。

ASC認証マーク

その課題に対する手段としてASC認証制度があります。環境にできるだけ負担をかけずに持続可能な養殖水産物であるということが一目でわかるようにエコラベルを貼って市場や消費者ん届くようにします。

現在の水産業を取り巻く問題に関心を持つ市場関係者や消費者がこのラベルを見て水産物を選ぶことが増えれば、結果的には「持続可能な漁業」の取り組みを後押しし、サポートすることに繋がります。

ASC認証マークはそのような活動を後押しする社会的な仕組みの一つです。

宮城県南三陸町「戸倉っ子カキ」が日本初でASC国際認証を取得

宮城県南三陸町は、宮城県北部に位置し、気仙沼市と石巻市のほぼ中間地点にあります。

南三陸町の志津川湾は開放的内湾で、水深は深いところで50m以上あります。天然の魚種がとても多い海です。

牡蠣養殖は昭和40年代から行われてきましたが、そのほかにもアワビ、ウニ、タコ、アキザケなどたくさんの水産物が水揚げされる豊かで恵まれた環境です。

震災をきっかけに「持続可能な牡蠣養殖」に転換

2011年の東日本大震災で南三陸町はとても甚大な被害を受けました。養殖筏、牡蠣処理施設、漁船すべてを津波で流されてしまい廃業せざるを得ないほどの大災害に遭いました。

しかし、その出来事をきっかけに、これまでの牡蠣養殖方法から転換を図り「持続可能な牡蠣養殖」への方向転換をしました。

具体的には、これまで過密状態であった養殖密度を大幅に削減するために1000台以上あった筏の数を3分の1以下に減らしました。

養殖サイクルや生産コストの見直し、また自然に負荷をかけずに災害に強い養殖場づくりを一から目指すことにしました。

1年で出荷サイズにする

震災以前は、種付けから生産まで2年から3年ほどかけて生産をしていました。

それに対して震災後は、筏の密度を以前の3分の1以下に削減することによって、牡蠣の栄養分である植物プランクトンを充分に供給できるようにし、養殖期間の短縮をして1年で出荷することを目指しました。

結果的には、想像をはるかに超える成長を見せたので、本格的な漁場設置を開始することになりました。

【これは革命】漁業権の既得権益を撤廃

震災後「宮城県漁業協同組合 志津川支所 戸倉出張所カキ部会」は連日に及ぶ激しい話し合い、ディスカッションを経てとても大きな決断を下すことにしました。

それは、これまで各組合員37名に割り当てられてきた養殖区画(筏の持ち台数)を一度白紙にするということでした。

具体的には、後継者のいる世帯や家族構成に配慮して、筏の持ち台数を再分配する「ポイント制」を考案して、これを導入しました。

つまり、後継者のいる世帯により多くの筏が分配されるようになったということです。

これにより、若い後継者のモチベーションが高まり、震災後に漁業から離れていた若者が戻ってきたり、新しく漁業に就く若者が増えるなどして、南三陸町の浜に活気が戻ってきました。

本格的にASC認証取得に向けて活動開始

前述したASCの理念は「環境と地域社会に配慮した持続可能な責任ある養殖業」です。この理念は、戸倉カキ部会の目指すべき理想の養殖業と一致しています。

それを受けて(公財)世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)と南三陸町が支援をすることとなり、本格的にASC認証取得に向けての活動が始まりました。

以下、認証決定までの流れです。

2014年環境調査を開始
2015年2月23-24日予備審査を行い問題点を確認
2015年11月12-13日本審査
2016年3月30日正式に認証決定

徹底した品質管理

安全性と品質を高めるために滅菌海水で22時間以上の浄化を行います。むき身の牡蠣に関しては、階段式洗浄機を用いることで牡蠣殻の混入を防ぎ、2℃の冷海水で品温を5℃以下まで冷やすなどして品質管理を徹底しています。

衛生検査についても各種細菌検査、ノロウィルス検査、海水検査など週1〜2回の検査を実施しています。

ASCの二枚貝基準7原則の遵守

ASCの二枚貝基準7原則は下図のようになっていて、125の審査項目があります。また、ASC姉弟の認証機関による3年に1度の更新審査と年1回の年次監査があります。

原則①法令順守(該当するすべての国際、国内、地方の法的必要条件と規制の順守)
原則②自然環境および生物多様性への悪影響の軽減(漁場周辺の自然環境と生物多様性の保全、海底の汚染度、養殖密度、絶滅危惧種への悪影響の軽減)
原則③天然個体群への影響(外来種や有害物質による天然個体群の遺伝子かく乱の防止)
原則④病害虫の管理と食害防止(薬剤や鉛などの有害物質の管理)
原則⑤資源の効率的な利用(牡蠣殻や薬品といった廃棄物の適切な処理と消費エネルギーの管理、再利用やリサイクルの推進)
原則⑥地域社会に対する責任(周辺の地域社会に対する配慮と連携)
原則⑦適切な労働環境(安全で公正な労働環境の整備、過剰な残業や不適切な賃金体系の禁止)

オリンピックと持続可能な漁業の関係

先に開催されたロンドン大会とリオ大会では、選手村などでASC・MSC認証の魚介類が提供されました。

2020年の東京オリンピックでも同様に「持続可能性に配慮した調達」を掲げましたが、選手たちに提供する水産物はこのままでは足りません。

日本国内には国際規格に沿った認証制度がない上に、国際的に信用度の高いASC・MSC認証を取得している水産物はたったの4種類です。(2017年4月現在)

さまざまな国際規格に準拠したMSC認証は世界の約100カ国に普及していて、認証品は年間約950トンとなり、世界の水産物の約1割を占めています。

それに対して日本のASC・MSC認証漁業は非常に少ないのです。

日本の従来の漁業は漁獲量が過剰で、その持続可能性を証明できておらず、5年おきの更新の際に認証を失う例もあるなど、件数が伸びていません。

これは、水産資源の持続可能性に関する国際的な基準と、日本におけるこれまでの水産資源管理に大きな隔たりがあることと、業界内における「持続可能な漁業」についての認識がまだまだ少ないことが原因だと考えられます。

日本国内のASC認証漁業

認証漁業宮城県漁業協同組合志津川支所の戸倉っ子カキ
認証取得日2016年3月30日

日本国内のMSC認証業業

認証漁業京都府機船底曳網漁業連合会のアカガレイ漁業
認証取得日2008年9月19日

京都府機船底曳網漁業連合会のアカガレイ漁業はアジア・日本初のMSC認証取得漁業です。

認証漁業北海道漁業協同組合連合会のホタテガイ漁業
認証取得日2013年5月13日
認証漁業明豊漁業株式会社のカツオ・ビンナガ一本釣り漁業(宮城県塩釜市)
認証取得日2016年10月17日

まとめ

海外では大手スーパーマーケットやレストラン、ホテルなどが積極的にASC・MSC認証の水産物を調達基準とする事業者が増えています。

日本においてもオリンピック招致をきっかけに国際認証ASC・MSCへの関心は少しずつ広がっており、大手スーパーなどがこのような認証食材の調達を決定しています。

環境に負荷をかけず、自然と共生することで良好な状態の漁場環境を維持し、持続可能で高品質な牡蠣環境を目指す、宮城県漁業組合志津川支所にはこれからも注目し、応援していきます。


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あずまよしのぶ

あずまよしのぶ

「嫌いなものが好きになる。」そんな連鎖が続くと世界は平和になる!と思ってます。実はもともと牡蠣が苦手でした。お腹もあんまり強くないので基本的に敬遠してました。でもある時「本当に安心で美味しい牡蠣」に出会い、それを食べてからこれまでのイメージがガラッと変わり、今では牡蠣が大好きになったんです。牡蠣は知れば知るほど面白い!とても神秘的な生き物。牡蠣に苦手意識がある人にこそ、牡蠣に触れてもらいたい。真の魅力を知ってもらいたい。もともと苦手だった私だからこそ届けられるメッセージがあると思い日々活動しています。魅惑の牡蠣ワールドに一歩足を踏み入れてみませんか?牡蠣経験はまだまだ浅いので日々勉強の毎日です。しかしながら、牡蠣と向き合うのはとても楽しく奥が深いです。また、牡蠣開けは精神修行のようでもあるなと思う今日この頃です。

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