広田湾(岩手県陸前高田市)の牡蠣の特徴、そしてこれからの牡蠣生産や販路拡大について
2017年8月5日〜6日に、牡蠣の会は陸前高田の広田湾に視察へ行ってきました。初日は現地に到着してすぐに、広田湾の牡蠣生産者さんとの意見交換会が行われました。
なんとこの取り組みが地元新聞に掲載されました!様々な意見が活発に交わされましたよ。生産者さんの想いを消費者に伝えたり、消費者のニーズや動向を生産者さんに伝えたりするのも我々の役割だと思っています。
目次
恵まれた漁場、広田湾
岩手県の三陸の牡蠣は赤崎を筆頭に築地などの市場でとても高値で取引をされています。その中でも広田湾産の牡蠣は、有名な赤崎産を上回るせり値がつくことがある、知る人ぞ知る良質な牡蠣を生産する地域です。
広田湾は岩手県の最南に位置する湾で、牡蠣の養殖のほか、ホタテやワカメ、最近ではイシカゲガイという高級貝の養殖なども盛んなところです。
豊富な森林がすぐ海に迫る三陸リアスの真ん中にあるというとても恵まれた漁場となっています。
ミネラルが豊富
海に迫り立つ半島の付け根にある箱根山からは、広田湾のさらに先の方向に気仙沼唐桑半島の山の背、その逆方向には大船渡湾(赤崎湾)を望むことができます。
天然のヤマメやアユが育つ気仙川が湾に直接注ぎ込みます。そのため、牡蠣の餌である植物プランクトンの栄養源であるミネラルをたっぷり含んだ水を森から運んでいます。
品質の高い牡蠣生産
岩手県では、むき身牡蠣だけではなく殻付き牡蠣の出荷に力を入れています。そのため、殻の形や大きさ、カップの深さなどなど、見栄えのいい牡蠣を作ることにこだわっています。
県内の多くの産地で耳吊りや温湯処理(あとで詳しく説明します)を行って、品質の高い牡蠣づくりに取り組んでいます。
広田湾の牡蠣は2年〜3年ものとなっていて殻の形は大きいものでも丸みがあり、中身はプックリとして、噛みしめると甘みを感じるのが特徴です。
広田湾の牡蠣づくりの特徴
先ほど少しだけ述べましたが、広田湾の牡蠣づくりの特徴は「温湯処理」と「耳吊り」です。とても手間のかかる作業ですが、品質の高い牡蠣づくりに欠かせない作業です。
温湯処理(おんとうしょり)
主に岩手県の牡蠣生産者に伝わっている牡蠣生産の工程です。赤崎の生産者が考案したとも言われています。
牡蠣の栄養分は海中のプランクトンですが、牡蠣の生育段階でワカメやフジツボ、ムール貝などの様々なものが牡蠣に付着して、牡蠣の栄養分を奪ってしまいます。
美味しい牡蠣をつくるためには、夏場の時期に適正な栄養を与えて、真夏の時期に牡蠣ロープを海からあげて、船の上でお湯につけて余計な付着物(ワカメやフジツボやムール貝など)を死滅させる作業を行います。
牡蠣はお湯につけて大丈夫なの?と思いますよね。大丈夫なんです。牡蠣は生命力が強いので他の生物が死滅する温度帯のお湯につけても生きているんです。お湯の温度はだいたい70度とのことです。
耳吊り(みみづり)
牡蠣はこのように、ホタテの貝殻(見えないけど)にぎっしりとくっついて固まって育った状態になっています。これを一旦バラバラに外すんです。
牡蠣の蝶番の部分に、ひとつひとつドリルで穴を開けます。そしてその穴にテグスを通します。そしてその牡蠣をロープに等間隔に繋いでいくのです。
とても手間がかかるこの作業ですが、塊でぎっしりとぶら下がっている通常の牡蠣養殖と違って、ゆったりとした中で大きくなり、同時に殻の形もキレイに育つのです。
広田湾を盛り上げる若手牡蠣生産者 佐々木学さん
今回の牡蠣生産地視察の一番最後には、岩手県陸前高田市米崎町で牡蠣の養殖を営む佐々木商店を訪問しました。こちらの代表である佐々木学さんは、親子3代続く牡蠣生産者です。牡蠣に携わって10年余りになるそうです。
生産者も自らが販売に力を入れられるように
広田湾の牡蠣生産者はみんなこだわりも強いし牡蠣の品質には絶対の自信を持っています。しかし、その販売に関しては漁協の販売ルートに乗っていることがほとんどで、生産者個人としての強みや良さがなかなか出せていないところがあるようです。
佐々木さんは自らが生産した牡蠣を漁協の共同販売ルートには乗せておらず、全て自分で売り先を見つけて販売をしています。
牡蠣生産者はほとんどが自分でマーケットを見つけてやっていくのが怖いと感じている方が多いようです。
しかし、いきなり全部ではなく少しずつ自分で販売ルートを開拓していき、牡蠣づくりへのやりがいをさらに見出していってはどうか?という提案を周りの生産者にしているそうです。
自分で売っていかないと、自分で作った牡蠣が実際どのように扱われているのか、どのように食べられているのかが見えてこない。
自分で売ることによって見える世界が変わったし、人と人の繋がりで紹介が次々と生まれ、それが糧となって、次はアレをやってみよう、コレをやってみよう、といったように仕事への意欲が増してくるそうです。
とても精力的に活動をされています。詳しくは上の動画をご覧ください。
牡蠣生産だけではなく、マーケティングに関してもさまざまな工夫をされています。牡蠣を出荷する発泡スチロールの色や見せ方、WEBを活用してどのように拡散するのかなどさまざまなテストをしています。
これらの活動もすべては地元を活性化させるため
「隣の漁師はライバルでないので」という言葉が印象的でしたが、これは決して「ライバル視していない」などという意味ではなく、もっと広い視野で広田湾という地域としての名前を、生産者全体で広めていきたいという想いからなのです。
これからも佐々木さんの動向からは目が離せません。いま注目の若手牡蠣生産者のひとりです。

あずまよしのぶ

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